医療従事者が寝ても疲れが取れない理由|体の循環から整える睡眠習慣
- ・休みの日はよく寝てるのに寝た気がしない
- ・連勤中はずっと寝ても疲れが残ってる…
- ・夜勤明けて帰って寝ると夜が眠れない(とくに看護師や介護士の方)
- ・仕事のことが頭から離れず布団に入っても寝付けない(ずっとナースコールが頭から離れない…)
このようなこと、医療従事者は一度は経験があるのではないでしょうか?
実はこれ、「疲れているから」ではなく体の回復に必要な血流や自律神経の“循環”と、睡眠リズム(体内時計)が崩れていることが原因です。
私も休日に昼前まで寝たのにスッキリせず、結局昼寝をしてしまいリズムを崩してしまうということを何回もしてしまっていました。
当時は「疲れているから仕方ない」と思っていましたが、むしろその過ごし方が疲労を長引かせていたと後から気づきました。
ここでは、
- ・睡眠不足によるリスク
- ・なぜ長く寝ても体が重いのか
- ・夜勤明けの体内時計を整える具体的な方法
- ・体を回復させるための睡眠習慣
について体を回復させる順番を整える、つまり体の回復設計という観点から解説していこうと思います。
皆さんの寝起きがスッキリするようなことをお伝えします!ぜひ実践してみてください!
医療従事者の睡眠の現状とリスク
医療従事者の睡眠の現状
医療従事者は慢性的な睡眠不足に陥りやすい職種です。
国内の大学病院の看護師を対象とした研究では50%以上の人が「寝覚めがスッキリしない」と回答したという結果があり、平均の睡眠時間は6.4時間でした。
これは、推奨されている睡眠時間の7〜8時間時間を大きく下回っています。
また、看護師の約8割以上が「睡眠不足を感じている」 と答えているとのことです。
やはり、不定期な勤務体制などの職業の構造的問題が睡眠の悩みに関与している事が伺えますね。
睡眠不足のリスク
医療従事者にとって睡眠不足は大きく2つの深刻なリスクが潜んでいます。
①ヒヤリハットや重大事故を起こしやすくなる
度重なる睡眠不足は集中力、判断力や記憶力の低下をもたらし、泥酔状態のような脳機能になります。
我々、医療従事者は医療行為やリハビリでの訓練など常に患者さんや利用者さんの怪我につながる場面や命の危機に立ち会う場面があります。
睡眠不足が続くととっさの判断が遅れ、ヒヤリハットや重大事故につながる可能性が高くなります。
6時間未満の睡眠不足が2週間続くと2日間連続で徹夜した状態と同じ脳の状態になるので、寝ていても十分な時間ではなければ慢性的な睡眠不足になることにも気をつけたいです。
②感染症にかかりやすくなる

睡眠不足が免疫力低下につながることも報告されています。
十分な睡眠が取れてないと体内で自然免疫、獲得免疫の働きが乱れ、免疫力の低下や慢性的な炎症を引き起こします。
感染症の方を相手する職業である医療従事者は他の職種よりも感染リスクが高いため、より体調を崩してしまう可能性を高めてしまいます。
また、インフルエンザやノロウイルスなどの感染症にかかると長期間強制的に休まないといけないので無駄に有給休暇を消化してしまうというのもリスクになります。
睡眠不足が危険なのは理解できたと思います。 では、「長く寝れば回復するのか?」というと、実はそうではありません。
次に、見落とされがちな「寝すぎ」のリスクについて解説します。
なぜ寝ても疲れが取れないのか
休日編
休日の寝溜めは一見回復しているように見えて、実は疲労回復を妨げます。
休日にゆっくりいつもよりも2〜3時間遅く起きると体内時計がずれます。(社会的時差ボケといいます。)
なんと、2日間朝寝坊を続けると体内時計が30~45分遅れるという結果が出ています。
体内時計がズレると、自律神経やホルモンのリズムも乱れ、だるさや疲労感が抜けにくくなります。
その後、休日明けにいつものように早起きすると体がまだ睡眠モードになっているため強い怠さや疲労感に繋がります。
この社会的時差ボケも疲労だけではなく、長期的には免疫力の低下、高血圧などのリスク上昇の可能性があることが分かっています。
夜勤明け編
では、夜勤明けに寝すぎると疲労がのこってしまうのでしょうか?
夜勤明けの後、5〜8時間寝てしまうと本来寝るべき時間に眠れなくなり、体内時計がさらに乱れてしまいます。
これは、体内時計が“昼の睡眠”を本来の回復の睡眠としてうまく認識できず、睡眠の質が下がってしまうためです。
その結果、次の日の疲労や寝不足につながってしまいます。
また、帰宅直後に寝られないこともあると思います。
退勤時に朝日を浴びてしまうと体内時計が朝だと認識し、体が覚醒モードに入ってしまいます。
これによって眠気が飛び、結果的に入眠しづらくなり、体内時計のズレ(社会的時差ボケ)を強めてしまいます。
つまり、間違った寝方を続けると、疲労は抜けないどころか蓄積していきます。 では、どうすれば体内時計を崩さずに回復できるのでしょうか?
すぐに実践できる回復する睡眠習慣
休日編
休日にすることは「朝にリセットして、軽く体を動かす」です。
①朝の光を浴びる
よい睡眠習慣は寝起きから始まります。
寝起き30分以内に朝日を浴びることで体内時計がリセットされ、夜に自然と眠くなるリズムが整います。
これは朝の光によって分泌されるセロトニンが、約14〜16時間後に睡眠ホルモンであるメラトニンに変わるためです。
おすすめは朝食前に15〜20分前に日光を浴びることです。また、曇りでも効果的です。
②軽く体を動かす(自然があればベスト)
自然の中で過ごすことはストレス軽減に効果がありますが、必ずしも特別な場所に行く必要はありません。
近所の公園や家の周りを5〜10分歩くだけでも十分です。
軽い運動を行うことで副交感神経が働き、体がリラックスしやすくなります。
さらに、血流が改善されることで“体の循環”が整い、夜の睡眠の質が高まります。
回復設計の基本は「休養→軽く動く」です。
しっかり休んだあとに少しだけ体を動かすことで、体は本来の回復リズムを取り戻します。
夜勤明け編
夜勤明けの方は「体内時計をずらさないように体を休めること」が最優先です
①朝日を浴びすぎない
夜勤明けの方の対策は退勤のタイムカードを切った時点で始まります。
疲労回復を妨げる大きな要因の一つが“朝日”です。朝日を目から浴びすぎてしまうと体内時計が朝に設定され疲れていても眠れない状態になります。
朝日の光刺激をブロックするためにUVカット付きのサングラスが帰宅時に必須です。

②帰宅後の入浴はぬるめに
帰宅後の入浴は最高のリラックスタイムですね。ここにも体を整えるコツがあります。
温度は38~40℃で20分程度つかることがおすすめです。夜勤明けは交感神経がたかぶっており、妙にそわそわしたり焦った気持ちになることがあります。これくらいの温度が副交感神経を優位にさせ心を落ち着かせる働きがあります。
反対に41℃以上の熱めのお湯では、交感神経を優位にさせてしまいなかなかリラックスしない状態になるため注意が必要です。
また、半身浴もおすすめです。立ち仕事のむくみを改善させてくれます。
しかし、ひどく疲れている場合は無理せずシャワーのみで済ませましょう。
③帰宅後の仮眠時間に気を付ける
夜勤明けにそのまま長時間(5~8時間以上)寝てしまうと夜の本睡眠がとれなくなり、体内時計が整わず、体の回復の循環が止まってしまいます。
ただし、夜勤明けの体は疲労困憊で睡眠を欲しています。眠らないのではなく、仮眠時間を90分~3時間にすることが大切です。(※あくまで目安です。)
人間の眠りのサイクルは90分周期で繰り返されます。このタイミングで起きると起き抜けのぼーっとした感覚が少なくなるため、寝起きがすっきりし自分のやりたいことができるようになります。これでその日の充実感も得られます。
起きたい時間にアラームをセットすることで正しい仮眠習慣を手に入れましょう。
ここまでできれば、夜勤明けでも体内時計を崩さずに回復できるようになります。
次に、これらを実践する上で避けたいNG行動について解説します。
寝る前のNG行動
睡眠の質を下げる原因は「刺激・光・考えすぎ」の3つです。
①カフェインやアルコールの摂取
カフェインは寝る6時間前以降、夜勤明けは帰宅後の摂取は控えましょう。
交感神経を優位にし、寝つきを悪くする原因になります。
また、寝る前のアルコールはリラックスした感覚はあっても、睡眠の質を下げてしまい疲労回復にはつながりません。
②寝る前にスマホなどのブルーライトを見ること
寝る前に布団に入ってスマホをみてしまうことはあるあるだと思います。
スマホやタブレットから発するブルーライトは体内時計を乱れさせ、寝つきを悪くし眠りを浅くすることに繋がります。
私も布団に入ってスマホを見てしまうことがありますが、疲れているときや次の日にすっきり起きたいときはスマホではなく間接照明で本を読むなどの過ごし方に変えて気を付けています。
③眠れないときに寝ようと頑張ること
寝ようと布団の中に入っても眠れないときがあると思います。
特に医療従事者は
- ・今日の患者さん、利用者さんへの対応あのときあれでよかったかな?
- ・明日はあの人とまた顔を合わせないといけないのか・・・
など責任のある仕事であるが故に家に帰っても落ち着かないことがありますよね。
私もいろいろ考えて眠れないときがあります。
その時に「明日も早いんだから眠らなきゃ」と焦って寝ようと意識してしまうと体が寝室を「悩みがどんどん出てくる落ち着かない場所」と認識してしまうため、布団の入っても眠れないという習慣ができてしまいます。
寝室は“寝る場所”として使わないと、眠れない場所に変わってしまいます
その時は一度布団から出て別の部屋へ行き、読書をするなど(スマホやテレビはNGですよ)心を落ち着かせて眠くなってきたら寝室へ行くということをしてみてください。
また、いつもの寝る時間に眠くならないときも無理に寝室へ行くのではなく眠くなるまでもう少し待ってみるということも意識すると熟睡に繋がります。
※すでに強い疲労や不眠が続いている方へ
もし
- ・寝たいのに全く眠れない日が続いている
- ・日中のだるさや集中力低下が強く、仕事に支障が出ている
- ・気持ちの落ち込みや不安が強くなっている
このような状態が続いている場合は、無理に自分だけで解決しようとしなくて大丈夫です。
医療機関(心療内科や精神科)に相談することも一つの選択肢です。
受診することは決して特別なことではなく、体や心を守るための行動です。
これ以上無理を重ねてしまう前に、一度立ち止まってご自身の状態を見つめてみてください。
睡眠習慣を整えよう
睡眠は、ただ長く取ればいいわけではありません。
大切なのは、体を回復させる“順番”を整えることです。
今回お伝えしたように
- ・体内時計を崩さない
- ・血流や自律神経の流れを整える
- ・間違った習慣を避ける
この積み重ねで、睡眠の質は大きく変わります。とはいえ、最初からすべてを完璧にやる必要はありません。
まずは
・起きたらカーテンを開けて朝日を浴びる
・夜勤明けは長く寝すぎず、短時間の睡眠にとどめる
この2つだけでも十分です。
小さな習慣を整えるだけで、寝起きの重さや日中のだるさは確実に変わっていきます。
夜勤明けでリズムが崩れてしまう方や、休日に寝ても疲れが抜けないと感じている方は、ぜひ今回の習慣を取り入れてみてください。
日々の疲れを翌日に持ち越さないために、できることから一つずつ整えてみてください。 出勤前の一歩目が、きっと軽くなります。
