職場を辞める前に試したい3つのこと|我慢でも転職でもない「模様替え」という手
辞める前に、まだ手がある
辞められない原因が環境要因にあるかもしれないと話した記事では、しんどさの原因を「変えられる環境」と「変えられない環境」に仕分けました。
(まだ見られてない方はこちらから→辞めたいのは甘えじゃない|医療従事者が消耗する「環境要因」の正体と見分け方|かる~くブログ)
この記事は、「変えられそう」「まだ試していない」に印がついた人のための1本です。
辞めずに今の職場で動くことを、「我慢の継続」だと思っていませんか。
ここで扱うのは、我慢ではありません。例えるなら、環境の「模様替え」です。
今の部屋が住みにくいとき、いきなり引っ越す人は少ないはずです。まず家具を動かしてみる。カーテンを変えてみる。それで案外、住み心地が変わることがある。
職場も同じで、伝え方ひとつ、持ち場ひとつで、見える景色が変わることがあります。
模様替えを試しもせずに引っ越すと、次の部屋でも同じ住みにくさにぶつかったとき、また「引っ越す」しかカードがなくなってしまう。
だからこの記事では、辞める前に試せる3つの模様替えと、消耗せずに試すための心得をお伝えします。
試して変われば、もうけもの。
どうやっても動かせないのが「間取り」だとわかったら、そのときは堂々と、引っ越し——転職の話(→転職を“選ぶ”という考え方|次の職場を見極める3つの問いと、動く前に整えるもの 準備中)へ進んでください。
どちらに転んでも、あなたは前に進んでいます。
なぜ「引っ越し」の前に「模様替え」なのか
転職を考えたことがあるのに、今も同じ職場にいる。それはあなただけではありません。
総務省の労働力調査によると、2025年に「転職したい」と考えていた人は全国で1023万人。一方、実際に転職した人は330万人でした。医療職に限った数字ではありませんが、働く人全体で見ても、希望している人の3人に2人は今の場所に留まっている計算になります。
動けないことを、意志の弱さだと思わないでください。理由ははっきりしています。
正直に言うと、転職は強いカードです。環境を丸ごと変えられる、いちばん大きな一手。
私自身、そのカードを切って働き方が変わった一人です。

ただ、強いカードは、切るのにも力が要ります。
履歴書、面接、引き継ぎ、新しい職場に慣れるまでの気力。生活のリズムも、人間関係も、一度ぜんぶ組み直しになる。消耗している時期に切るには、重いカードなのです。
そしてもうひとつ。模様替えを試さずに引っ越した場合、「自分は何が嫌で、何なら変えられたのか」を知らないまま次の部屋を選ぶことになります。
- 伝えたら変わったかもしれないことを、伝えずに出ていく
- すると次の職場でも、同じ場面で同じしんどさに出会う
- カードはもう「また引っ越す」しか残っていない
逆に、模様替えを試した人は、結果がどうであれ「選ぶ目」が育っています。何が家具で、何が間取りだったのか。
自分はどこまでなら伝えられて、職場は何に応えてくれなかったのか。それが分かっている人の職場選びは、精度がまるで違います。
だからこの順番なのです。
模様替えは、引っ越しの否定ではなく、引っ越しの準備にもなる。
試した経験は、残る人にも、出ていく人にも、ちゃんと効いてきます。
模様替えの3つの選択肢
模様替えには、大きく3つのやり方があります。手をつけやすい順に並べます。
①「伝える」——上司に判断材料を渡す
いちばん身近で、いちばん誤解されている選択肢です。
「言っても無駄」「わがままだと思われる」——そう感じて、飲み込んでいませんか。
ここで、視点をひとつ変えてみてください。
あなたが黙っていると、上司は情報ゼロで采配を振ることになります。
上司は全体を見て仕事を割り振っています。でも、あなたの余力がいまどのくらいかは、あなたにしか見えません。伝えることは、要求ではなく、上司の判断材料を渡すこと。むしろ黙っている方が、上司の采配の負担を増やしていることさえあるのです。
私にも、担当患者さんの受け持ちが多く、一日を終えるとクタクタになる時期がありました。長くても半年ほどの期間だと見えていたので、その時期は自分の役目をなんとか果たしました。
ただ、自分の状況を伝えないまま上司に割り振りを任せていると、上司は全体を見ながら手探りで選ぶしかありません。そんな時期が何度かあって、あるとき思い切って伝えてみました。
「すみません、今の担当人数で手一杯です」
すると、配慮できるときは担当人数を調整してもらえたのです。
もちろん、いつでも通るわけではありません。私も余裕のあるときは、多めの受け持ちを引き受けていました。だからこそ「手一杯です」の一言に、耳を傾けてもらえたのだと思います。本当に業務に支障が出そうなときは、相談していい。それを学んだ経験でした。
伝えるときのコツは2つ。状況を事実で伝えること(「つらい」より「今の担当人数で手一杯です」)。そして平時の信頼を貯めておくこと。受け入れられるときに受け入れているから、限界のサインが本物として届きます。
② 持ち場を変える——異動・部署変更
同じ法人でも、部署が違えば環境はほとんど別の職場です。人間関係も、時間の流れも、業務の質も変わります。
以前一緒に働いていた人に、他職種との衝突が多い人がいました。
そばで話を聞いていて感じていたのは、「この人だけが悪いわけではない」ということです。どちらが正しいかではなく、お互いの合う・合わないの問題に見えました。
その人が、別の部署に移りました。
すると、そこで関わる人たちとの関係はとても良くなり、見違えるほど生き生きと働くようになったのです。
同じ人が、場所を変えただけで、こんなに変わる。
あの姿を見て、私は「環境を変える」の意味がひとつ腑に落ちました。合わない場所で消耗している人は、「ダメな人」ではありません。まだ合う場所に出会っていないだけ、ということがあるのです(このあたりの考え方は、人間関係の章でも書いています→※内部リンク)。
「辞める」と「残る」の間には、「移る」という中間のカードがあります。院内公募や面談での異動希望など、経路があるなら選択肢に入れていい。引っ越しをせずに、住む部屋だけ変えるような一手です。
③ 自分の裁量範囲を整える——働き方の調整
自分の業務内容の負荷量は関わる人数が少ない仕事ほど、あなたの手の中にあります。
一日のスケジュールの組み立て、記録を書くタイミング、休憩の取り方、仕事の段取り。ここは誰の許可もいらない、いちばん小さくて確実な模様替えです。
(このあたりの具体的な工夫は、働き方の章で詳しく書いています→働き方核② ※内部リンク)
消耗せずに試すための、3つの心得
模様替えには、ひとつだけ落とし穴があります。
「変えよう」と頑張り続けること自体が、新しい消耗になってしまうことです。
伝えても変わらない。それでも粘る。気づけば、模様替えのつもりが我慢の上塗りになっていた——これでは本末転倒です。そうならないための心得を3つ、置いておきます。
心得①:期限を決める
模様替えは、無期限の努力ではなく「期限つきの実験」にしてください。「3ヶ月伝えてみて変わらなければ、間取りの問題だと結論を出す」。期限があるから、粘りが我慢に変質しません。
心得②:記録を残す
いつ、誰に、何を伝えて、返答はどうだったか。メモで充分です。記録には2つの効果があります。ひとつは、頭の中の「言っても無駄かも」を事実で置き換えられること。もうひとつは、もし引っ越し(転職)を選ぶことになったとき、「私はやれることをやった」という自分への証明になることです。辞める決断の罪悪感は、この記録がかなり軽くしてくれます。
心得③:NOも収穫と数える
伝えてNOだった。異動が叶わなかった。それは失敗ではありません。「ここは変えられない環境だ」という仕分けが、推測から確定に変わったのです。確定した人の職場選びは、迷いの量が違います。
思い出してください。この記事の冒頭で言ったことを。
試して変わればもうけもの。変わらなければ、堂々と次へ。
どちらに転んでも、あなたは前に進んでいます。
明日への一歩|いちばん小さい模様替えから
ここまでを、一枚にまとめます。

明日への一歩は、こうです。
以前お話しした棚卸しリストを振り返ってみましょう

「変えられそう」の中でいちばん小さいものをひとつ選んでください。そして期限を決めて、試してみる。大きな交渉からではなく、いちばん動かしやすい家具からです。ひとつ動けば、部屋の空気は変わりはじめます。
そして、期限まで試して、それでも動かなかった人へ。
それは、あなたの伝え方が悪かったのでも、頑張りが足りなかったのでもありません。間取りの問題だと、はっきりしただけです。
次の記事では、いよいよ「引っ越し」の話をします。
追い詰められて飛び出す転職ではなく、整えてきたあなたが落ち着いて“選ぶ”転職の話です(→ 転職を“選ぶ”という考え方|次の職場を見極める3つの問いと、動く前に整えるもの 準備中)。
私は、環境は逃げる先ではなく、選ぶものだと思っています。
模様替えも、引っ越しも、どちらもその「選ぶ」のひとつです。
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