医療従事者のお金の土台づくり|貯める・増やすで働き方に余白を
「働き方の章」でタスクや時間の効率についてお伝えした際、このようなことを書きました。
時間もタスクも整えて、日々の消耗を減らしていっても、ふっと消えない不安が残ることがある、と。
まだ見てない方はこちらから→削られないための効率化|医療従事者の時間・タスク・スキルの整え方|かる~くブログ
「この働き方を、自分はいつまで続けられるんだろう」。夜、ふと湧いてくる、あの感覚です。
その不安の正体を一言でいうと、お金です。
「辞めたいのに辞められない」医療従事者へ|消耗しない働き方の順番|かる~くブログ
こちらでも触れましたが、「辞めたら生活はどうなる」という心配があるかぎり、私たちは無理な働き方も、合わない環境も、手放せなくなります。逆に言えば——お金の不安が小さくなれば、働き方の選択肢は静かに増えていく。
この記事では、その土台を「貯める」と「増やす」の2つからつくっていきます。派手にお金を増やす話ではありません。不安を小さくして、無理をしなくていい“余白”をつくる。それが、この章の目的です。
なぜ「お金の不安」が働き方を縛るのか
お金の話に入る前に、なぜこれが「働き方の章」に入っているのかを、少しだけ整理させてください。
体を壊しそうな残業も、しんどい人間関係も、それでも辞められない。その背景には、たいていお金の不安があります。「今の収入がなくなったら、生活が立ち行かない」。この感覚があると、人は目の前のつらさより、生活の安定を優先してしまう。だから、どれだけ働き方を工夫しても、根っこに「辞められない」という縛りが残り続けるんです。
ここで大事なのは、お金の不安は「お金をたくさん増やせば消える」ものではない、ということです。
収入が上がっても不安が消えない人はたくさんいます。
不安の正体は、金額そのものより自分の生活を守れるかという疑問です。
だとしたら、やることは2つです。ひとつは、貯める。毎月出ていくお金を軽くして、いざというときに生活を守れるお金を用意する。もうひとつは、増やす。将来に向けて、少しずつお金に働いてもらう仕組みをつくる。この2つで「先の見通し」が立つと、不安は驚くほど静かになります。
ただ、その前にひとつだけ。
このお金の話は、体と心がある程度整っていることが前提です。消耗しきって余裕がない状態だと、お金の判断は「今すぐなんとかしなきゃ」という焦りに引っぱられます。焦りの中で決めたお金の選択は、たいていうまくいきません。これは後ほど私自身の失敗談としてお話ししますが、じつは私も、どこかで気が急いていた時期に、お金のことでずいぶん遠回りをしてしまいました。
だからこの章は、体の章・心の章を通ってきたあなたに向けたものです。もしまだ心身がしんどい状態なら、お金のことは一度わきに置いて、先に心身から先に整えることを優先してください。
体の章についてはこちらから→「医療者はなぜ“まず体から”整えるべきなのか」|かる~くブログ
心の章についてはこちらから→頑張りすぎる医療従事者ほど心が削れる理由|あなたが弱いんじゃない、構造の問題です|かる~くブログ
土台が整って、少し落ち着いて考えられるようになってから。そのほうが、ここから話す「貯める・増やす」も、ずっと冷静に、あなたのペースで進められます。
それでは、順に見ていきましょう。まずは、今日からいちばん効く「貯める」から。
貯める——固定費を、一度だけ見直す
まず「貯める」から。ここでいう貯めるは、我慢して節約する、という話ではありません。一度見直せば、あとは自動でお金が残っていく仕組みをつくる、という意味です。
節約というと、食費を削る、日用品を安いものに変える、といったイメージが浮かぶかもしれません。でも、正直に言うと、ここはあまりおすすめしません。毎日の小さな我慢は、額のわりに気力を削るからです。消耗を減らしたいのに、節約で新しい消耗を増やしてしまっては本末転倒ですよね。
だから狙うのは、固定費です。毎月、意識しなくても勝手に出ていくお金。ここは一度手をつければ、あとは何もしなくても、ずっと効き続けます。たとえば、こんなところです。
- 保険
なんとなく勧められて入ったまま、という保険はありませんか?医療従事者は公的保障にも詳しいはずなのに、自分のこととなると見直しが後回しになりがちです。本当に必要な保障だけに絞れると、毎月の負担がぐっと軽くなることがあります。
- 光熱費
たとえばプロパンガスなら、都市ガスに変えられる住まいかどうかを一度調べてみる。電力・ガスの会社を切り替えるだけで、使い方は何も変えずに月々が下がることもあります。
- 通信費
大手キャリアのまま、という人は、格安プランに変えるだけで月に数千円変わることも珍しくありません。
大事なのは、これらが一度きりの作業だということです。今日、一度動けば、来月からは自動で手元にお金が残っていく。毎日の我慢で捻出するお金と違って、気力を消耗しません。これが「貯める」の考え方です。
そして、こうして浮いたお金には、もう一つの役割があります。いざというときに生活を守る「生活防衛資金」です。生活費の数か月分を、使わずに取っておく。これがあるだけで、「もし今の仕事を失っても、しばらくは大丈夫」という安心が生まれます。この安心こそが、無理な働き方や合わない環境から距離を取るための、最初の余白になります。
増やす——新NISAで、淡々と積み立てる
固定費を見直して、生活防衛資金という守りを固めたら、次はいよいよ「増やす」です。
とはいえ、ここでも派手な話はしません。短期間で大きく儲ける、という話ではなく、余ったお金に長い時間をかけて少しずつ働いてもらう、という地味な話です。
その器として、まず知っておきたいのが新NISAです。これは、投資で得た利益に税金がかからなくなる国の制度です。通常なら利益に約20%の税金がかかりますが、NISA口座の中ならそれが非課税になります。しかも非課税で保有できる期間は無期限で、いつでも売却できます。つみたて投資枠なら、金融庁が一定の基準で厳選した投資信託の中から選ぶ形なので、初心者でも株価が乱高下する商品をつかみにくい設計になっています。つみたて投資枠は年間120万円まで使えますが、もちろん月1万円のような少額からで大丈夫です。
そのうえで、私自身が実際にやっていることをお話しします。あくまで私の実践であって、これを勧めるものではありません。私は、全世界の株式にまとめて連動する「オルカン(オール・カントリー)」や、アメリカの代表的な企業に連動する「S&P500」といった、手数料の低いインデックスファンドを、毎月決まった額だけ淡々と積み立てています。この考え方は、YouTubeや書籍で知られるリベラルアーツ大学(両学長)を参考にしています。
リベラルアーツ大学についてはこちら↓
なぜ、このインデックス積立なのか。
じつは私も、投資の入り口は短期・中期の売買でした。安く買って高く売る、あの世界です。勉強もしました。チャートの形から値動きを読むテクニカルな手法を学んで、いざ自分でやってみたんです。
でも、思うようにはいきませんでした。学んだ手法はあまり通用せず、値動きは決算や経済ニュースといったファンダメンタルにいとも簡単に左右される。気づけば、少しの値動きも見逃すまいと、チャートから目が離せなくなっていました。仕事の合間もスマホを気にして、休みの日も画面と眺めて…
――消耗を減らすためのお金の話なのに、逆に自分の時間と気力が削られていたんです。
これでは、本末転倒でした。私が欲しかったのは、増えるお金よりも、穏やかな時間だったはずなのに。
そこでたどり着いたのが、今のインデックス積立です。個別の会社やタイミングを選ばず、世界や国の経済全体に少しずつ乗せておく。あとは値動きを見もせず、ほったらかしにしておくだけ。手間がかからないから、時間も気力も削られません。派手さはないけれど、「削られない働き方」を目指すこの考え方と、いちばん相性がいいやり方だと感じています。
ここで、大事なことを正直にお伝えします。投資に「絶対」はありません。元本は保証されておらず、タイミングによっては、預けたお金が一時的に減ることもあります。だからこそ、順番が大切です。先に固定費を見直し、生活防衛資金という守りを固めてから。増やすのは、当面使う予定のない余ったお金だけ。 この順番さえ守れば、値下がりがあっても生活は揺らぎませんし、慌てて売らずに済みます。
投資は、不安をあおる道具ではありません。むしろ逆で、「将来に向けて、少しずつ準備できている」という感覚が、今の不安を静かにしてくれます。増やすことに一喜一憂するためではなく、先の見通しを持つためにやる。それが、この章での「増やす」の位置づけです。
貯める×増やすで、「選べる余白」が生まれる
「貯める」と「増やす」。この2つがそろうと、何が変わるのか。
生まれるのは、お金そのものというより、心の余白です。固定費を軽くして、生活防衛資金という守りがある。将来に向けて、少しずつ積み立ても続いている。すると、「もし今の仕事を辞めても、しばらくは生きていける」「この先も、なんとかなりそうだ」という感覚が、少しずつ育っていきます。
この感覚が、じつはとても大きいんです。
お金の不安に縛られているときは、「辞める」という選択肢そのものが、頭から消えています。でも、余白ができると、その選択肢が静かに戻ってくる。今の職場に残るのも、環境を変えるのも、どちらも「追い詰められて」ではなく「自分で選んで」決められるようになります。
お金の土台づくりは、贅沢をするためのものではありません。いざというときに、自分の意思で選べる自分でいるためのものです。そしてこの「選べる」という状態こそが、次の章でお話しする「環境を選ぶ」への、いちばん大切な準備になります。
私の場合——「貯める」でラクになった話
私も、大学を卒業したての頃は「節約」というものを知りませんでした。
当時の月々の給料は、私にとっては大金でした。「社会人になって、働いて給料をもらう」。そのことを実感すると同時に、一種の“無敵感”を味わっていたんです。実家に住んでいたこともあって少し余裕があり、飲み会や遊びに、今振り返ると「そんな使い方する?」と自分でもあきれるほど散財していました。(でも、あれはあれで楽しかったし、大事な思い出です。)
危機感を持ったのは、一人暮らしを始めたときでした。家賃、光熱費、食費、日用品――今まであぐらをかいていた部分を全部自分で負担することになって、月々の出費の多さに青ざめたんです。「これは、貯金しなければ」。そう決意して出会ったのが、両学長でした。
そこでまず始めたのが、携帯キャリアの見直しです。大手から格安プランに変えるだけで、使い勝手は何も変わらないのに、8000円〜9000円の携帯料金が3000円〜4000円になり、月々の負担がすっと軽くなりました。たったこれだけのことなのに、あれだけ重く感じていた支払いに、少し余裕が生まれたんです。
不思議なもので、一つ固定費を軽くできると、「次はどこを見直せるだろう」と前向きになれました。今では、削るというより“整える”感覚で、お金と向き合えています。あの頃の青ざめた気持ちは、もうありません。
まとめ
お金の話は、つい「増やす」ばかりに目が向きがちです。でも、この章で伝えたかったのは、その手前のこと。
固定費を一度見直して、生活を守るお金を用意する(貯める)。そのうえで、余ったお金に、時間をかけて静かに働いてもらう(増やす)。この2つは、お金を増やすためというより、「先の見通し」を持って、不安を小さくするための土台です。
そして、その土台の上にできる「心の余白」が、あなたを今の場所に縛りつけていた鎖を、少しずつゆるめてくれます。
※本記事は投資の推奨、および投資による利益を保証するものではありません。最終的なご判断は、ご自身の状況に合わせてお願いします。
体を整え、心を整え、人間関係を整え、働き方を整えてきました。日々の消耗を減らし、お金の不安をやわらげて、「選べる自分」に近づいてきた。ここまで来たら、いよいよ最後の一歩です。次の章では、整えた土台の上で「どんな環境を選ぶか」——転職も含めた、環境そのものの話をしていきます。
次に読む ▶︎ 環境の章(準備中)
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