転職を“選ぶ”という考え方|次の職場を見極める3つの問いと、動く前に整えるもの
引っ越しを、選ぶという話
「辞めたい」と思ったとき、転職を考える前にできる「模様替え」を試したあなたへ。
(まだ見てない方はこちらから→職場を辞める前に試したい3つのこと|我慢でも転職でもない「模様替え」という手|かる~くブログ)。
伝えてみた。異動を探ってみた。自分の裁量の範囲は整えてみた。
それでも動かなかったのなら——それは間取りの問題です。
部屋の中をどう変えても、間取りは変えられません。そのときに残る選択肢が、引っ越し。つまり転職です。
ここで、ひとつ確認させてください。
転職を考えているあなたは、今の環境に追い詰められていますか?それとも環境を選ぼうとしていますか?
同じ「転職する」でも、この2つはまったく別のものです。
追い詰められて飛び出す転職を、私は否定しません。心や体が壊れる前に離れるのは、正しい判断です。
ただ、そうやって決めた転職は、選択肢を並べて選んだのではなく、残った一つに飛び込んだことになります。
このブログでは体、心、人間関係、働き方を整えることも伝えています。
整っている人は、比べられる。待てる。断れる。
それが「選ぶ」ということです。
まだ見られてない方は体、心を整えることからおすすめします。
体の章についてはこちら→「医療者はなぜ“まず体から”整えるべきなのか」|かる~くブログ
心の章についてはこちら→頑張りすぎる医療従事者ほど心が削れる理由|あなたが弱いんじゃない、構造の問題です|かる~くブログ
この記事では、転職を勧めることはしません。
代わりに、転職を”選ぶ”ための判断軸と、動くときの最低限の手順をお伝えします。読み終えたあと、「やっぱり今は動かない」という結論でもまったくかまいません。それもまた、選んだということですから。
「追い詰められての転職」と「選ぶ転職」
この2つを分けるのは、勇気でも我慢強さでもありません。手元にあるカードの枚数です。
整った状態で動く人には、3つのことができます。
比べられる——複数の職場を並べて見られます。1つしか見ていないと、それが良いのか悪いのかも判断できません。
待てる——「思っていたのと違う」と感じたとき、断れます。生活の余裕がないと、違和感に気づいても飲み込むしかなくなる。
聞ける——見学や面接で、知りたいことを質問できます。余裕がないと「採ってもらえるか」で頭がいっぱいになり、こちらが相手を見極める視点が消えてしまうのです。
逆に、追い詰められた状態で動くと、判断の基準が静かにすり替わります。「良い職場かどうか」ではなく、「今よりマシかどうか」へ。
マシな場所を選ぶこと自体は悪くありません。ただ、その基準で選ぶと、今の職場と同じ構造の職場を選んでしまうことがあります。給料は少し上がったけれど裁量はやっぱりない、人は優しいけれど人手不足は変わらない——形を変えた同じしんどさに、また出会ってしまう。
ここまで読んで、「そんなことを言われても、もう限界だ」と感じた人へ。
その場合は、整えるのを後回しにしてその環境から離れることを考えてください。転職だけではなく、休職することも立派な行動です。
先に離れて、それから整えればいい。順番は入れ替えてかまいません。この章の順番は、余裕のある人のためのもので、限界の人を縛るためのものではありません。
そのうえで、私の考えをひとつ。
転職の成功とは、良い環境に移れたことではなく、自分で次の道を選べたこと。
私はそう思っています。
決めたのが自分なら、次の職場で壁にぶつかったときも、「選び直す」という発想が残ります。飛び込んだだけだと、それが残りません。
私が転職を選ぶまで
環境の章の一つの記事で、朝の送迎をなくせないか、せめてルートを変えられないかと上司に提案し、答えは全てNOだったという話をしました
(まだの方はこちら→辞めたいのは甘えじゃない|医療従事者が消耗する「環境要因」の正体と見分け方|かる~くブログ)。
送迎の件で「これは自分では変えられない」と分かってから、私がまず手をつけたのは、自分の1日のスケジュールでした。
送迎があることを前提に、どうすれば残業を減らせるか。試したことは、書類業務を隙間時間に片づけるというよく使われる方法です。特別なことは何もしていません。それでも、残業はいくらか減りました。
ところが、です。
残業が減ると、さらに別の仕事が振られるようになりました。
周りのスタッフは後輩ばかりでしたから、どうしても私に優先的にまわってきます。
それも隙間時間でやろうとしましたが、今度は物理的に無理でした。頭の中でいろいろな解決方法を考えては、行き詰まる。その繰り返しです。
そしていつからか、頭に浮かぶ解決方法が「転職しよう」の一択になっていました。
不思議なもので、そのときの私はそれがすとんと腑に落ちたのです。追い詰められた末の思いつきではなく、考え尽くしたあとに残った、いちばん筋の通る答えとして。
動き出すのは早かったと思います。前々から転職サイトには登録するなど、準備だけはしていたからです。あとは情報収集をして、相談をして、転職活動へ。そして実際に、職場を変えることができました。
いま振り返って、いちばん良かったと思うのはここです。
転職活動での職場見学のときに、給料も、休みも、残業の有無も、自分から聞くことができました。
聞けたのは、私に余裕があったからです。「採用してもらえるだろうか」ではなく、「ここは自分に合うだろうか」という側に立てていた。だから確認できたし、納得して決められました。
ここまで私の話をしてきましたが、これは特別な経験ではないようです。
厚生労働省の転職者実態調査によると、自分の意思で転職した人が挙げた理由の1位は「賃金以外の労働条件がよくなかった」(28.2%)、2位が「満足のいく仕事内容でなかった」(26.0%)、3位が「賃金が低かった」(23.8%)でした。医療職に限った数字ではありませんが、お金より上に「働き方」と「仕事の中身」が来ているのが分かります。
別の調査(雇用動向調査)でも、前職を辞めた理由、女性の上位は「労働時間、休日等の労働条件」です。
出典 kekka_gaiyo-03.pdf (厚生労働省 雇用動向調査結果 令和6年度)
決め手になるのは、たいてい待遇そのものではなく、日々の働き方が変わらないことなのだと思います。
次の環境を、何で見極めるか
見学や面接は、選ばれる場ではありません。こちらが見極める場でもあります。
先ほどの転職者実態調査には、もうひとつ面白い数字があります。転職した人が次の職場を選んだ理由の1位は「仕事の内容・職種に満足がいくから」(41.0%)、2位が「自分の技能・能力が活かせるから」(36.0%)、3位が「賃金以外の労働条件がよいから」(26.0%)。賃金の高さは上位に入っていません。
辞めるときも、入るときも、人はお金だけで判断しているわけではないのです。
ただ、ここで立ち止まってほしいことがあります。
「仕事の内容が良さそう」も「条件が良さそう」も、見学の場で分かるのは“表側”だけだということです。同じ業務内容でも、裁量があるかないかで消耗は全く変わります。
だから、見極める材料を2つの層に分けて考えてみてください。
表の条件——聞けば分かること
給料、休日、残業の有無、勤務時間、教育体制。
数字や制度で答えられることは、遠慮せずに聞いていい項目です。
私も見学のときに、給料・休み・残業について自分から質問しました。聞きにくいと感じる人は多いと思いますが、働き始めてから知るより、先に知っておくほうがお互いのためです。答えを濁されたり、質問そのものを嫌がられたりしたなら、その反応自体がひとつの情報になります。
裏の構造——聞き方を変えると見えること
ただ、条件が良くても消耗する職場はあります。ここまで読んできた人ならもう分かるはずで、しんどさは条件ではなく構造から生まれるからです。
そこで、現職場の環境を見極める際に使った3つの問いを持ち出します。(まだの方はこちら→辞めたいのは甘えじゃない|医療従事者が消耗する「環境要因」の正体と見分け方|かる~くブログ)
自分の職場を測った物差しで、次の職場も測ってみてください。

問い①:ここでは、誰が決めているのか
「担当の割り振りは、どなたが決めていますか」「現場の判断で変えられることはありますか」——裁量がどこにあるかを見る質問です。すべてが上から降りてくる職場は、入ってからも同じことになります。
問い②:伝える経路はあるか
「困ったとき、誰に相談する流れになっていますか」「面談の機会はどのくらいありますか」——声が届く道があるかどうか。道のある職場なら、多少の不満は模様替えで解決できます。
問い③:変わった前例はあるか
いちばん効く質問がこれです。「最近、現場の意見でルールが変わったことはありますか」
具体例がすっと出てくる職場は、動く組織です。答えに詰まる、あるいは抽象的な話しか返ってこないなら、構造が固まっている可能性があります。
見学は1回きりに見えて、実はあなたの物差しの精度を試す場でもあります。今の職場で「変えられる/変えられない」を仕分けてきた経験が、ここで効いてくるのです。
動く前に、整えておくもの
「選ぶ」ためには、選べる状態が要ります。動き出す前に整えておきたいものを3つ。

お金の余白——いちばん効きます。生活の余裕がないと、条件の悪い提示でも「もうここでいい」と飲んでしまう。逆に数ヶ月分の蓄えがあるだけで、断る力が生まれます(お金の土台づくりは働き方の章で詳しく書きました→働き方核③ ※内部リンク)。
体力と心の状態——転職活動は、思っている以上に気力を使います。書類、面接、情報収集。これを消耗しきった状態でやると、判断の質が落ちる。だからこのブログは、体と心を最初の柱に置いています。
準備だけ先にしておく——これは私自身がやっておいて良かったことです。転職サイトへの登録など、「まだ動かないけれど、動けるようにはしておく」状態。腹が決まったときに、すぐ次の一歩へ移れます。
そして、この3つ目には別の効用もあります。
登録して求人を眺めるだけでも、外の相場が見えるのです。自分の給料が世間と比べてどうか、他の職場はどんな条件で募集しているか。それを知ると、今の職場を冷静な目で測れるようになります。転職しないと決めた場合でも、この情報は無駄になりません。
進め方は、ごくシンプルです。
準備(登録・情報収集)→ 気になる職場を数件比べる → 見学や面接で問いを当てる → 納得できたら決める。
在職中に進めるのが基本で、辞めてから探すのは、お金の余白を削りながらの活動になります。急を要する事情がなければ、順番はこのままがおすすめです。
まとめ|選べる場所に、あなたはもう立っている
ここまでをまとめると、こうなります。

体を整え、心を守り、人との距離を選び、働き方を工夫し、そして環境を見極める。
5つの柱はあなたの現状をかる~くするためにあります。
今回は転職という「引っ越し」を決めるために知っておいてほしいことをお伝えしました。
転職の成功とは、良い環境に移れたことではなく、自分で次の道を選べたこと。
私はそう思っています。
だから、この記事を読んで「今は動かない」と決めた人も、同じだけ前に進んでいます。動かないことを選べた、ということですから。
(次の記事では、判断に迷ったときのための「環境の限界サイン セルフチェック」を用意しました→準備中)
他の「整える」についてはこちら
疲労が残っている体「整え」ませんか?詳しくはこちら↓

働き方を整えるについてはこちら↓

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