人間関係を整える
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「いい人」をやめたい医療従事者へ|人間関係を軽くする3つの枷と鍵

人間関係の【3つの枷】この鍵で外してください
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はじめに

白衣の天使。仁術の人。患者さんに寄り添う人。

医療従事者は職業を選んだその瞬間から、「いい人」という看板を背負わされる仕事です。

――ここにたどり着いたあなたも、「いい人を辞めたい」、もしくは「いい人に疲れてきた」と感じて何かしらのヒントを求めているのではないでしょうか?

医療従事者を例える美しい言葉、その中には「医療従事者はいい人であるべき」という外側から我々にはめられた、見えない枷の意味も持ち合わせています。

我々医療従事者は、人間関係に「べき」を抱えがちです。

「患者さん、利用者さん、職員、皆から好かれるべき」

「チームには溶け込むべき」

「いつでも『いい人』でいるべき」

――こんな声が、頭の片隅で常に鳴っていませんか?

前の記事では、医療従事者の人間関係を削る3つの構造についてお話ししました。

関わる相手の多さ、逃げ場のなさ、「優しくあるべき」という見えない圧力。これらは、職業の構造として確かに存在するものでした。

ですが、構造の中で実際にあなたを苦しめているのは、その構造に自分で気づかないうちに足を取られている「枷」だったりします。

「みんなから好かれていなければ、仕事がうまくいかない」

「チームに溶け込めなければ、ここでは生き残れない」

「『いい人』でいないと、医療従事者としてダメ」

これらは事実ではありません。です。誰かに――あるいは職場の空気に――あなたが知らぬ間にはめられてきた、見えない枷。

ここでは、

  • 医療従事者がなぜ「べき」に縛られやすいのか
  • 外していい3つの枷
  • それぞれの枷を外す「鍵」

について解説していきます。

この章の中心メッセージは、たった一つ。全員と仲良くしなくていい。今日はその意味を、3本の鍵として一緒にお渡しします。


なぜ医療従事者は「べき」に縛られやすいのか

そもそも、なぜ我々医療従事者はこんなにも「べき」に縛られてしまうのか。

前の記事でも触れましたが、医療従事者には利他規範――つまり「人のために尽くすべき」という価値観が、職業の根幹に組み込まれています。これは医療という仕事の根幹であり、決して悪いものではありません。

ただ、この利他規範は強力で、しばしば自分と他者の境界線を曖昧にします。「人のため」と「自分のため」の境目が分からなくなり、気がつくと相手の感情・期待・要求まで自分で引き受けてしまう。

ここで一つ、有名な心理学の概念を紹介します。アドラー心理学の「課題の分離」という考え方です。

アドラーは「人間の悩みのほとんどは対人関係から生まれる」と言い切った心理学者ですが、彼が示した対処法はとてもシンプル。それは「これは誰の課題か」を分けて考える、ということです。

  • あなたが誰かにどう思われるか → その人の課題
  • あなたが誰かを好きでいられるか → あなたの課題

医療従事者は、ここがごちゃ混ぜになりやすい職業です。「患者さんに好かれているか」「先輩からどう見られているか」「同僚との関係がうまくいっているか」――これらは本来、全部相手の課題なんです。

なのに、我々はそれを自分の課題として背負ってしまう。だから疲れる。だから「べき」に縛られる。

念のため補足すると、「課題の分離」は冷たく突き放すことではありません。自分の課題ではないものを、過剰に背負わないというだけの話です。これを土台に、3つの枷を見ていきましょう。


枷①|みんなから好かれるべき

医療従事者として働き始めると、多くの人が最初にはめられる枷がこれです。

「人当たりがいい人と思われたい」

「嫌われると仕事に支障が出る気がする」

「みんなに親切に、丁寧に、笑顔で」

――こうして、誰にでも好かれようとする日々が始まります。

でも、ここで一度立ち止まって考えてみてください。「みんなから好かれている人」って、本当に存在するでしょうか?

おそらく、いないんです。どんなに人柄のいい人にも、苦手だと感じる人は必ずいます。それは、その人の問題ではなく、人と人の組み合わせの問題。前の記事で触れた「嫌いじゃなくて、合わない」と同じ話です。

そして、「みんなから好かれよう」とすればするほど、起きてくることがあります。自分の本音や意見が、少しずつ消えていく

  • 反対意見が言えない
  • 違和感があっても飲み込む
  • 自分の優先順位を後回しにする

結果、どうなるか。深く好かれる人ではなく、薄く好かれる人になってしまうんです。

ここで、先ほどの「課題の分離」を思い出してください。誰があなたをどう思うかは、その人の課題です。あなたがコントロールできることではありません。

であれば、コントロールできないことに労力を使うより、自分が誰と深く関わりたいかを自分で選ぶ方が、ずっと建設的です。

全員から薄く好かれるより、大切な数人から深く信頼される。それで十分なんです。

1本目の鍵:誰にどう思われるかは、その人の課題

🗝️ 1本目の鍵|誰にどう思われるかは、その人の課題


枷②|チームに溶け込むべき

二つ目の枷は、もう少し集団的なものです。

「協調性のない人と思われたくない」

「飲み会も雑談もLINEグループも、全部参加した方がいい」

「『付き合いが悪い』と陰で言われたら終わり」

――こうして、業務以外の時間まで職場の人間関係に侵食されていきます。

ですが、ここで明確にしておきたいことがあります。チームワークと「仲良し」は別物だということ。

社会心理学に「社会浸透理論」という考え方があります。アルトマンとテイラーという研究者が提唱したもので、人間関係を「タマネギの皮」に例えています。

  • 外層:天気の話、仕事の話、趣味の話など、表面的な情報
  • 中層:価値観、考え方、家族の話などの個人的な情報
  • 深層:感情、トラウマ、深い悩みなど
  • 最深層:自己の本質、人生の信念

そして、ここが大事なのですが、全ての人と最深層まで関わる必要はないんです。むしろそんなことをしたら、人間関係でパンクします。

職場のチームワークというのは、本来外層〜中層レベルで十分機能するものです。プロとして業務上の連携が取れる、必要な情報共有ができる、相手を尊重して接することができる――これさえあれば、立派なチームワークです。

「飲み会に来ない人」「雑談しない人」「LINEを返さない人」が、即「チームを乱す人」というわけではありません。業務でちゃんと動ければ、それで十分なんです。

業務外の時間まで職場の人と過ごすかどうかは、完全にあなたの選択です。誰にも責められるべきことではありません。

2本目の鍵:業務で動ければ、それで十分

🗝️ 2本目の鍵|業務で動ければ、それで十分


枷③|「いい人」でいるべき

そして、おそらく一番外しにくいのが、この3つ目です。

「怒らない、不機嫌にならない、嫌な顔をしない」

「何を頼まれても引き受ける」

「『いい人』でいることが、職場での自分の価値」

――ここまで来ると、もはや「いい人」は人格と一体化しています。だから外すのが怖い。「いい人」をやめると、自分が誰だか分からなくなる気がするんです。

ここから少し、私自身の話をさせてください。

理学療法士になって最初の数年、私は「いい人」でいることに必死でした。

上司に急に「急患の足の骨折をした患者さんに松葉杖の使い方指導して」と振られても、心の中で「他の先輩空いてそうなのに…今手いっぱいなんだけど…」と思いながら、口では「はい、やります」と笑顔で返していました。

苦手な職場の人との雑談では、自分の意見をぐっと飲み込んで、気分を害さないように合わせて笑っていました。

患者さんに対しては、どんなに自分が疲れていても、絶対に「あなたの理解者です」といったスタンスで優しく接するようにしていました。

そうしている間、ずっと自分の中の何かが、少しずつ削れていく感覚がありました。

でも、当時の私はその違和感を「自分が未熟だから感じるもの」だと思っていました。「もっと成長すれば、こんなに疲れなくなるはず」と。

――今振り返ると、違ったんです。

「いい人」でいることに疲れていたのであって、未熟さの問題ではなかった。

私は、自分を消して職場に存在していたんです。

少しずつ、本当に少しずつですが、私は「いい人」をやめていきました。

すごく勇気の要る決断、というほど大げさなものじゃありません。たとえば、「今手が離せないので、他の方にお願いします。」と上司に言ってみる。職場の人との雑談に、ちょっと違う意見をそっと差し挟んでみる。患者さんとの会話で、無理に笑わない時間を作ってみる。

そんな小さな「いい人をやめる練習」を、少しずつ重ねてきました。

正直に言うと、今もまだ完全に外せたわけじゃありません。気を抜くと、すぐに「いい人モード」が戻ってきます。でも、戻ってきたら戻ってきたで、また少しずつ降りていく。そんな距離感で、自分の輪郭を取り戻している途中です。

だからもし今、「いい人」をやめるのが怖いと感じているなら、完全にやめなくていいんです。1日のうち5分でも、「いい人じゃない自分」でいる時間を作ってみる。それくらいから始めて、十分です。

3本目の鍵:1日5分から、いい人をやめる練習

🗝️ 3本目の鍵|1日5分から、いい人をやめる練習


じゃあ、どう関わればいい?

ここまで読んで、「じゃあ、職場でどう振る舞えばいいの?」と感じている方もいるかもしれません。

その答えは、この章のこの先で、もう少し具体的にお伝えしていきます。

  • 次の記事(核③)|境界線セルフチェック:自分の境界線がどれだけ削れているかを可視化する10項目 (準備中)
  • その次(実践記事①)|3つの距離の取り方:物理的・時間的・心理的に距離を取る具体策(準備中)

枷を外した先には、「全員と仲良くしなくていい」という自由があります。その自由を、明日からの自分の働き方に少しずつ織り込んでいく。それが、この章のゴールです。


おわりに

ここでは、

  • 医療従事者がなぜ「べき」に縛られやすいのか(利他規範+課題の分離)
  • 外していい3つの枷(みんなから好かれるべき・チームに溶け込むべき・「いい人」でいるべき)
  • それぞれの枷を外す3本の鍵

について解説しました。

🗝️ 1本目の鍵|誰にどう思われるかは、その人の課題

🗝️ 2本目の鍵|業務で動ければ、それで十分

🗝️ 3本目の鍵|1日5分から、いい人をやめる練習

繰り返しますが、この章であなたが覚えておいてほしいことは「全員と仲良くしなくていい」ということです。

全員から薄く好かれるより、大切な数人と深く繋がる。チームには業務で貢献し、業務外は自分の時間を守る。「いい人」をやめる練習を、1日5分から始めてみる。

――そんな関わり方が、医療従事者という職業の中でも、ちゃんと成立します。

この3本の鍵を、明日からの自分のポケットに、そっと入れておいてください。

次の記事では、今のあなたの境界線がどれくらい削れているかを、10項目のセルフチェックで一緒に見ていきましょう。

→ 次の記事「あなたの境界線、削れていませんか?|医療従事者のための人間関係セルフチェック10項目」を読む[準備中]

→ 「頑張り屋の医療従事者ほど人間関係で削られる理由」を読む

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🏥 医療機関を選ぶ目安

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「自分はどこに相談すればいい?」と迷った方へ。

症状や状況に応じた医療機関の選び方をまとめました。

【症状の重さで選ぶ】

・軽度〜中等度の不調(不眠、不安、抑うつ感)

→ 心療内科

・強い症状や薬物治療が必要な場合

→ 精神科

・身体症状が強い(動悸・めまい・頭痛など)

→ 心療内科(身体症状を扱える)

【状況別で選ぶ】

・仕事に関わる不調

→ 産業医・産業保健師(職場経由)

・緊急性があると感じる

→ 精神科救急(各都道府県の窓口)

→ 厚生労働省「まもろうよ こころ」

迷ったら、まず心療内科で相談するのが入口として安心です。

医師がより専門的な治療が必要と判断したら、

精神科や専門医を紹介してくれます。

「医療従事者だから」と一人で抱え込まず、

あなた自身がケアを受ける番です。

📍 近くの医療機関を探す

→ 近くの心療内科を探す:https://www.google.com/maps/search/心療内科

→ 近くの精神科を探す:https://www.google.com/maps/search/精神科

※リンクをタップすると、Googleマップで現在地周辺の該当医療機関を表示します。

口コミ・診療時間・電話番号もそこから確認できます。

※当ブログが特定の医療機関を推奨するものではありません。

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📌 この記事について

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この記事は、理学療法士 + メンタルヘルス・マネジメント検定

III種(セルフケアコース)を取得した著者が、

一般的な情報提供を目的として執筆しています。

医療診断・治療を目的としたものではありません。

つらい症状が続く場合や、ご自身で判断が難しい場合は、

医療機関(心療内科・精神科など)へご相談ください。

ABOUT ME
く~るか
く~るか
理学療法士
現在10年目の理学療法士です。今まで、病院で回復期、介護部門を経験しました。現在は、障害者支援施設で働いています。
20代後半から「自分が過度なストレスを抱えながら患者様や利用者様をサポートできるか?」ということを疑問に感じてきました。現在は、自分のストレスやメンタルとの向き合い方、そして働き方の土台になるマネーリテラシーについて学びながら、「無理を続けない働き方」を模索しています。
このブログでは、医療・介護職として働く中で感じたリアルな悩みや、自分を整えながら働くための考え方、具体的な行動を発信していきます。
趣味はカラオケやライブに行くこと。日常の中で心を回復させてくれるものや、ふっと力が抜けるような癒しも共有していきます。
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