医療従事者のための入浴術|日勤後・夜勤明けで変える疲労回復の入り方
仕事疲れ引きづってませんか?
「今日はもう、シャワーでいいや」
そう思って湯船を張らずに済ませた日は、どれくらいありますか。
一日中立ちっぱなしで、記録も終わらなくて、帰ってきたらもう21時。お湯を張って、沸くのを待って、浸かって、掃除して。そこまで考えただけで、体が重くなる。
シャワーなら10分で済みます。水道代もガス代も安い。何より、早く布団に入れる。
わたしも、ずっとそうでした。

節約になるし、そのぶん早く寝られる。合理的な選択だと思っていました。
でも、朝起きたときの体が、いつも重かった。
寝る時間は確保しているはずなのに、足はむくんだままで、肩は固まっていて、「よし、行くか」と思えるまでに時間がかかる。疲れが取れていないのは、睡眠時間が足りないせいだと思っていました。
試しに、湯船に浸かる日を作ってみたときのことです。
翌朝、体が軽い。劇的に元気になったわけではありません。ただ、足の重さが違う。起き上がるときに使う気合いが減っている。
それ以来、湯船に浸かることを習慣にしました。
湯船は、贅沢ではありませんでした。回復のための工程でした。
この記事では、理学療法士として、そして同じように疲れて帰ってくる医療従事者の一人として、入浴を「疲労回復の設計」として捉え直していきます。
7割以上が、疲れを翌日に持ち越している
そもそも、この疲れは自分だけの問題なのでしょうか。
日本医療労働組合連合会が全国の看護職員約3万2千人を対象に行った調査では、疲れの回復具合について「疲れが翌日に残る」「いつも疲れている」と答えた人が73.6%にのぼりました。これは1988年の調査開始以来、最も高い数値です。
健康状態に不安を抱えながら働いている人は60.0%にのぼります。
7割以上が、疲れを翌日に持ち越している。
これは個人の頑張りが足りないという話ではありません。夜勤、立ち仕事、緊張の連続。回復が追いつかない構造の中で働いているということです。
だからこそ、限られた時間の中で「どう回復するか」を設計する必要があります。
この記事では・・・
- シャワーだけでは得られない、湯船の3つの作用
- 入浴のタイミングが眠りを左右する理由
- 日勤後・夜勤明け・連勤中それぞれの入り方
- 湯船に入れない日の「これだけでいい」ライン
- やってはいけない入浴
睡眠そのものについてはこちら↓で詳しく解説しています。
医療従事者が寝ても疲れが取れない理由|体の循環から整える睡眠習慣|かる~くブログ
あわせて読むと、夜の回復設計が組み立てやすくなります。
シャワーだけでは回復しない理由
シャワーと湯船、何が違うのか。
「体が温まるかどうか」だと思われがちですが、実はそれだけではありません。湯船に浸かったとき、体には3つの物理的な作用が同時に働いています。このうちシャワーで得られるのは、ひとつだけです。
温熱作用 ── 血流を動かす
お湯に浸かると体が温まり、血管が拡張して血の巡りがよくなります。全身の隅々まで酸素と栄養が運ばれ、同時に、体に溜まっていた疲労物質や老廃物の回収が促進を促してくれます。
筋肉や靭帯のこりによる痛みも、温まることで緊張がほぐれて軽減する効果も!
一日中立ちっぱなしだった脚、患者さんを支えて張った腰、緊張で固まった肩。これらは「使いすぎて硬くなった状態」。
硬くなった筋肉は血流が悪くなり、血流が悪いとさらに硬くなる。この悪循環を断ち切る最初の一歩が、温めることです。
これはシャワーでもある程度得られます。ただし、当たっている部分だけです。
静水圧作用 ── 溜まった血液を心臓へ戻す
ここが、シャワーでは絶対に得られない作用の一つ。
水の中では、体に水圧がかかり水深1mにつき76mmHg(0.1気圧)ずつ増していきます。これは圧肩まで浸かった状態でウエストを測ると、湯船に入っていないときと比べて数センチ縮むほどの圧です。
この圧が、全身をやさしくマッサージをする役割を持ちます。
立ち仕事を続けていると感じませんか?重力によって血液や体液が下半身に溜まっていく感覚。夕方になると靴がきつくなる、脚がパンパンになる。あの状態です。
水圧で体が適度にしめつけられると、末端に滞っていた血液が心臓に向かって押し戻されます。ポンプの役割を、お湯がしてくれるということです。
シャワーでは、この圧はかかりません。
どれだけ丁寧に脚にお湯を当てても、溜まった血液は動かない。むくんだまま布団に入ることになります。
立ち仕事の医療従事者にとって、静水圧作用こそが湯船に浸かる最大の理由です。
浮力作用 ── 関節と筋肉を休ませる
肩まで浸かると、浮力によって体重が普段の約10分の1。体重60kgの人なら、水中では6kg程度です。
普段、私たちの筋肉と関節は、常に体を支えるために働き続けています。立っているときはもちろん、座っているときも、姿勢を保つための筋肉は動いています。
浮力によって重力から解放されると、体を支えていた筋肉と関節が、ようやく休むことができます。
理学療法の世界では、水中運動療法という考え方があります。関節に負担をかけずに動かせるため、リハビリの現場でも使われています。湯船に浸かるという行為は、その原理を日常に持ち込んでいるとも言えます。
シャワーで得られるのは3分の1
整理すると、こうなります。
シャワーが悪いわけではありません。ただ、シャワーだけでは回復の3分の1しか得られていないということです。
「なんとなく疲れが取れない」の正体が、ここにある場合があります。
わたしが湯船を習慣にして翌朝の足の重さが変わったのは、おそらく静水圧作用が効いていたのだと思います。疲れが取れた感覚ではなく、「溜まっていたものが戻った」感覚。あれは気のせいではありませんでした。
入浴のタイミングが、眠りを決める
同じ温度、同じ時間の入浴でも、いつ入るかで翌朝の体は変わります。
理由は、人が眠くなる仕組みにあります。
人は「体温が下がるとき」に眠くなる
体温には2種類あります。手足の表面の温度である皮膚温と、内臓など体の内部の温度である深部体温です。
日中、深部体温は皮膚温より2度ほど高く保たれています。しかし夜、眠る時間が近づくと深部体温が0.3〜0.6度低下し、皮膚温との差が縮まっていきます。
この深部体温の低下が、脳に「眠る準備ができた」と伝えるスイッチです。
赤ちゃんが眠くなると手足が温かくなるのを見たことがあると思います。あれは、手足の血管を広げて体の内部の熱を外に逃がしている状態です。熱を放散することで深部体温を下げ、眠りに入ろうとしています。
つまり、寝つきをよくしたければ、深部体温を効率よく下げればいい。
入浴は、体温を上げることで下げる
ここが入浴の面白いところです。
湯船に浸かると、当然ながら深部体温は一時的に上がります。40℃のお湯に15分入ると、深部体温は約0.5℃上昇します。
しかし体は、上がりすぎた体温を元に戻そうとします。手足の毛細血管に大量の血流が送り込まれ、皮膚から熱がどんどん放散されていく。
この放熱によって、深部体温は入浴前よりも大きく、そして速く下がっていきます。
一度上げるからこそ、その後の落差が生まれる。入浴後に眠くなるのは、この生理学的な現象が起きているからです。
上がった体温が戻るまで、約90分
では、いつ入ればいいのか。
秋田大学との共同実験では、40℃のお湯に15分入って上昇した深部体温が元に戻るまで、約90分かかることが確認されています。
このタイミングで布団に入ると、深部体温が下がりきる流れと入眠が重なり、深い睡眠が得られやすくなります。
テキサス大学の研究チームが5,322件の研究をレビューしたメタ分析でも、同様の結論が出ています。40〜42.5℃のお湯に浸かることで主観的な睡眠の質と睡眠効率が改善し、就寝1〜2時間前に10分程度入るだけで、寝つくまでの時間が平均10分短縮されました。
出典:Haghayegh S, et al. Before-bedtime passive body heating by warm shower or bath to improve sleep: A systematic review and meta-analysis. Sleep Medicine Reviews. 2019;46:124-135.
10分と聞くと小さく感じるかもしれません。しかし、布団に入ってから眠れない10分間は、体感としてはもっと長いものです。
就寝直前の入浴は、逆効果になる
注意したいのは、「寝る直前に入れば温かいまま眠れる」という考え方です。
これは逆です。
就寝15分前の入浴では、深部体温がまだ高い状態のまま布団に入ることになります。体は熱を逃がそうとしている最中なので、かえって寝つきが悪くなります。
「お風呂に入ったのに目が冴えた」という経験がある方は、タイミングの問題だった可能性があります。
大事なのは温度ではなく「下がり幅」
もうひとつ、押さえておきたいポイントがあります。
寝つきの良さに関係するのは、入浴によって上がった深部体温の絶対値ではなく、その後の低下の大きさだということです。
つまり、熱いお湯に入って体温を高く上げることが目的ではありません。上がった体温がしっかり下がる時間を確保することが目的です。
42℃以上の熱いお湯に入ればより効果的、ということにはならないということです。むしろ後述する理由から、逆効果になります。
90分が取れないときは
とはいえ、帰宅が遅い日に「就寝90分前に入浴」は現実的ではありません。
その場合の考え方は2つあります。
ひとつは、ぬるめのお湯にすること。38〜40℃程度なら深部体温の上昇が小さく、下がるまでの時間も短くなります。
もうひとつは、完璧を求めないこと。90分前が理想であって、条件ではありません。60分前でも、30分前でも、湯船に浸かること自体には静水圧作用と浮力作用があります。眠りへの効果が最大化されないだけで、体の回復には確実に働いています。
タイミングを守れないから入らない、では本末転倒です。
出典 早坂信哉, 古谷暢基『入浴検定 公式テキスト お風呂の「正しい入り方」』日本入浴協会, 2017.
勤務パターン別・入浴の設計図
ここまでの原則を、実際の勤務に落とし込みます。
同じ入浴でも、「これから活動する日」と「これから眠る日」では、入り方を変える必要があります。
日勤後 ── 帰宅時間から逆算する
基本設定:40℃前後・10〜15分・全身浴
日勤後の入浴で最も意識したいのは、静水圧作用です。一日中立ち仕事をした脚には、血液と体液が溜まっています。肩まで浸かって、水圧で全身を包む。これが翌朝の脚の重さを変えます。
タイミングは、就寝の90分前が理想です。
たとえば0時に寝るなら、22時半までに湯船から出る。19時に帰宅する人なら、夕食前でも後でも余裕を持って組み込めます。
問題は、帰宅が遅くなる日です。
21時帰宅で0時就寝なら、まだ90分は確保できます。しかし22時半帰宅となると、入浴して90分待つと寝るのが遅くなり、睡眠時間そのものが削られます。
このときは、睡眠時間を優先してください。
入浴のタイミングを完璧にして睡眠時間を6時間に削るより、38〜40℃のぬるめに10分浸かって、7時間眠るほうが回復します。入浴は睡眠の質を上げるための手段であって、目的ではありません。
夜勤明け ── 「これから眠る」ための入浴
夜勤明けの入浴は、日勤後とは目的が違います。
朝、明るくなった時間に帰宅して、これから眠る。体は「起きる時間だ」というシグナルを受け取っている状態で、無理に眠りにつく必要があります。
この状況で最もやってはいけないのが、熱いお湯に入ることです。
42℃以上の高温は、自律神経のうち交感神経を強く刺激します。交感神経は戦闘態勢の神経です。心拍数が上がり、血圧が上がり、筋肉が緊張する。眠るための体の状態から、真逆の方向に振れてしまいます。
「夜勤明けで熱いお風呂に入ってさっぱりしたい」という気持ちは自然なものです。ただ、そのあと眠るつもりなら、その入浴が眠りを妨げます。
夜勤明けの推奨設定:38〜40℃・10分程度・短めに
ぬるめのお湯は副交感神経を優位にします。リラックス方向に体を傾けたうえで、深部体温の上昇も小さく抑える。これから眠る体には、この設計が合っています。
そして帰宅後の流れとしては、入浴を済ませてから仮眠に入るのが自然です。ただし、ここでも深部体温の90分ルールは働きます。入浴直後に横になっても寝つけないことがあるので、その間に食事や着替えを済ませる時間として使うと無駄がありません。
なお、夜勤明けの仮眠の長さや光の管理については、【睡眠記事へのリンク】で詳しく解説しています。入浴だけでは夜勤明けの回復は完結しないので、あわせて設計してください。
補足として、これは文献と生理学の原則から導いた提案です。わたし自身は夜勤を経験していないため、実際の生活リズムの中でどう組み込むかは、皆さんのほうが現実的な判断ができるはずです。原則を知ったうえで、自分の型に落とし込んでもらえたらと思います。
連勤中 ── 10分でいい
連勤の中日は、最も入浴を省略したくなるタイミングです。
明日も早い。今日はもう限界。お湯を張る気力もない。
ここで思い出してほしいのが、メタ分析の結果です。就寝1〜2時間前に10分程度の入浴で、睡眠の質と睡眠効率の改善、寝つきの短縮が確認されています。
10分です。
20分浸からなければ意味がない、というものではありません。むしろ連勤中に長風呂をすると、それ自体が体力を消耗します。
連勤中の推奨設定:40℃・10分・肩まで浸かる
短くていいので、肩まで浸かることを優先してください。静水圧作用は水深に比例するので、半身浴より全身浴のほうがむくみには効きます。
「今日は10分だけ」と決めて入る。それだけで、翌日の脚が変わります。
湯船に入れない日の「これだけでいい」
ここまで湯船の話をしてきましたが、入れない日は必ずあります。
疲れすぎてお湯を張る気力がない。帰宅が遅すぎて時間がない。実家や寮で自由に使えない。単純に、今日はもう無理。
そういう日に「今日も入れなかった」と落ち込む必要はありません。
そもそも、入浴を習慣にするうえで一番の敵は、完璧にやろうとして続かなくなることです。ゼロか100かで考えると、一度崩れたときに戻れなくなります。
ここでは、湯船に入れない日の選択肢を紹介します。妥協案ではなく、それ自体に根拠のある方法です。
足浴 ── 研究でも効果が確認されている
先ほど紹介したテキサス大学のメタ分析では、実は湯船だけが対象ではありませんでした。
熱いシャワー、10分以上の足浴、全身浴のいずれでも、就寝1〜2時間前に行えば、寝つくまでの時間の短縮、睡眠効率の向上、主観的な睡眠の質の改善が得られると報告されています。
つまり、足浴は「湯船に入れないときの代わり」ではなく、眠りに対しては同じ土俵に立つ選択肢だということです。
やり方
バケツや洗面器に40℃前後のお湯を張り、くるぶしの上まで浸けて10〜15分。それだけです。
椅子に座ったまま、服を着たままできます。テレビを見ながらでも、スマホを触りながらでもかまいません。お湯が冷めてきたら差し湯をします。
なぜ足だけで全身に効くのか
足を温めると、その部分の血管が広がります。温まった血液が全身を循環することで、体全体の血行が改善します。心臓から出た血液は約1分で心臓に戻るので、足で温まった血液は全身を巡ります。
さらに、末端が温まることで熱放散が起こり、深部体温が下がる流れが作られます。これは湯船と同じメカニズムです。
副交感神経が優位になるため、リラックス効果と睡眠促進効果も期待できます。
足浴でも得られないもの
正直に書いておくと、足浴では静水圧作用と浮力作用はほとんど得られません。水深が浅いため水圧がかからず、体重を預けることもできないからです。
むくみを取りたい日、体を支えている筋肉を休ませたい日は、やはり湯船に軍配が上がります。
ただ、眠りにつなげるという一点においては、足浴は十分に機能します。
手浴 ── さらにハードルが低い
足浴すら面倒な日は、手浴という選択肢があります。
洗面器にお湯を張り、手首まで浸けて5〜10分。座ったまま、服を着たままできます。
手を温めると、心臓から手までの経路である肩と腕の血行も改善します。肩こりが軽くなる感覚を得られることがあるのは、このためです。
デスクワークや記録作業で肩が張っている日には、手浴のほうが合っている場合もあります。
シャワーだけの日の工夫
湯船も足浴も無理な日は、シャワーの当て方を少し変えるだけでも違います。
首の後ろに当てる。ここには太い血管が通っているため、温めた血液が全身に回りやすくなります。
肩甲骨の間に当てる。緊張で固まりやすい場所です。
ふくらはぎに当てる。第二の心臓と呼ばれる部位で、下半身の血流を助けます。
意識したいのは、温めたい場所に少し長めに当てることです。全身をさっと流して終わりにするのと、疲れている部位に30秒ずつ当てるのとでは、体感が変わります。
これらは湯船の代わりにはなりません。ただ、何もしないよりは確実に違います。
入れなかった日は、失敗ではない
大事なことなので、もう一度書きます。
湯船に入れなかった日は、失敗ではありません。
セルフケアの情報を読んでいると、「毎日やらなければ意味がない」という気持ちになることがあります。しかし、続かない完璧より、続く不完全のほうが体には効きます。
週に3回でも湯船に浸かれば、週0回とは違います。今日は足浴だけ、明日はシャワーだけ、明後日は湯船。それでいいんです。
疲れているときほど、自分に課すハードルは下げてください。
「今日はこれだけでいい」と決められることも、セルフケアの技術のひとつです。
やってはいけない入浴
よかれと思ってやっていることが、回復を妨げている場合があります。
42℃以上の熱いお湯
これが最も多い間違いです。
リンナイが全国47都道府県を対象に行った調査では、約3割の人が42℃以上のお湯に浸かっていました。
出典:【熱と暮らし通信】意識調査:入浴に関する全国47都道府県別意識調査、免疫が上がりにくい入浴をしてしまっている方は約5割 | ニュースリリース | リンナイ株式会社
熱いお湯に浸かると「効いている感じ」がします。しかし体の中では、逆のことが起きています。
日本人を対象にした多くの実験で、42℃以上の高温は自律神経のうち交感神経を強く刺激することが分かっています。交感神経は戦闘態勢の神経です。心拍数が上がり、血圧が上がり、筋肉が緊張します。
リラックスするために入ったお風呂で、体が臨戦態勢になっている。これでは回復しません。
推奨は40℃前後です。
38〜40℃のぬるめのお湯では副交感神経が優位になり、筋肉と関節が緩み、リラックス状態に入ります。「物足りない」と感じるかもしれませんが、体にとってはこちらが正解です。
熱いお風呂が好きな方は、まず1℃下げるところから試してみてください。
飲酒後の入浴
夜勤明けや連勤明けに一杯飲んで、それから風呂に入る。この順番は避けてください。
アルコールは血管を拡張させ、血圧を下げます。そこに入浴による血管拡張が加わると、血圧が下がりすぎて意識を失うリスクがあります。浴槽内での事故は、決して珍しいものではありません。
また、アルコールには利尿作用があり、入浴による発汗と合わせて脱水が進みます。
飲むなら、入浴後にしてください。
長時間の入浴
「長く浸かるほど効果がある」わけではありません。
10〜15分で十分です。それ以上になると、発汗による脱水が進み、かえって体に負担がかかります。のぼせや立ちくらみのリスクも上がります。
特に、疲労が強い日の長風呂は消耗につながります。連勤中は10分と決めてしまうほうが安全です。
入浴前後の水分補給も忘れないでください。コップ1杯の水を、入浴前と入浴後に。
夜勤明けの熱いシャワー
夜勤明け、目を覚まそうとして熱いシャワーを浴びる方がいます。
「これから活動する」なら、その選択は理にかなっています。熱いお湯は交感神経を刺激するので、覚醒には有効です。
しかし、帰宅してこれから眠るなら、逆効果です。
体を活動モードに切り替えてから布団に入ることになり、寝つきが悪くなります。夜勤明けは、ぬるめのお湯で副交感神経を優位にしてから眠ってください。
ヒートショックに注意
冬場、脱衣所と浴室の温度差が大きいと、血圧が急激に変動します。これがヒートショックです。
医療従事者の方には説明不要かもしれませんが、自分の身に起こる可能性については意外と意識が向きにくいものです。
対策はシンプルです。入浴前に浴室を温めておくこと。シャワーを高い位置から数分出しておくだけでも、浴室の温度は上がります。脱衣所に小型のヒーターを置くのも有効です。
疲れて帰宅した日ほど、血圧の変動は起こりやすくなります。
まとめ:入浴は「明日の体」をつくる時間
この記事の内容を整理します。
湯船には3つの作用がある
温熱作用で血流を動かし、静水圧作用で溜まった血液を心臓に戻し、浮力作用で関節と筋肉を休ませる。シャワーで得られるのは、このうち温熱作用だけです。
タイミングが眠りを決める
深部体温が下がるときに人は眠くなります。入浴で一度体温を上げると、その後の熱放散で深部体温が大きく下がる。この流れに約90分かかるため、就寝の1〜2時間前が最適です。
勤務パターンで入り方を変える
日勤後は静水圧を活かして全身浴。夜勤明けは38〜40℃のぬるめで、これから眠る体に合わせる。連勤中は10分でも十分に効果があります。
入れない日は足浴でいい
10分以上の足浴でも、睡眠への効果は研究で確認されています。手浴やシャワーの当て方の工夫でも、何もしないよりは確実に違います。
42℃以上は避ける
熱いお湯は交感神経を刺激し、回復と逆方向に働きます。
今日からできる、いちばん小さな一歩
全部を変える必要はありません。
もし今、42℃以上のお湯に入っているなら、設定温度を1℃下げる。これだけで、体の反応が変わります。
もし普段シャワーだけなら、週に1回でいいので湯船を張ってみる。翌朝、脚の重さを確かめてみてください。
もし今日、湯船に入る気力がないなら、バケツにお湯を張って足を浸ける。10分だけでかまいません。
わたしが湯船を習慣にしたきっかけは、大それた決意ではありませんでした。「試しに入ってみるか」くらいの気持ちで始めて、翌朝の体の軽さに気づいただけです。
疲れているときほど、回復のための手順は省略されます。それは自然なことです。ただ、省略し続けると、疲れは翌日に持ち越され、蓄積していきます。
看護職員の73.6%が疲れを翌日に持ち越しているという数字は、個人の努力不足を意味しません。回復が追いつかない構造の中で働いているということです。
だからこそ、限られた時間の中で、回復の効率を上げる工夫が要ります。
入浴は、今日の疲れを取る時間ではなく、明日の体をつくる時間です。
明日の朝、布団から出るときの「よいしょ」が少し軽くなる。出勤前の一歩目が、少しだけ軽くなる。
そのための15分だと思うと、湯船を張る手間も、少しだけ変わって見えるかもしれません。
一日の設計に組み込む
入浴は、それ単体で完結するものではありません。
いつ食べるか、いつ体を動かすか、いつ寝るか。その流れの中に置いて初めて、回復の工程として機能します。
休日や夜勤明けを「どう過ごすか」の全体像は、こちらでまとめています。
noteではより具体的な状況での「整う」スケジュールを紹介してます。
- あなたの心の疲れ「整えてみませんか?」↓
- 頑張りすぎる医療従事者ほど心が削れる理由|あなたが弱いんじゃない、構造の問題です|かる~くブログ
- 人間関係の疲れに関してはこちら↓
- 頑張り屋の医療従事者ほど人間関係で削られる理由|「断れない関係」の正体|かる~くブログ
著者情報
この記事は、理学療法士 + メンタルヘルス・マネジメント検定
III種(セルフケアコース)を取得した著者が、
一般的な情報提供を目的として執筆しています。
免責事項
本記事は一般的な健康情報の提供を目的としたものであり、個別の診断や治療を目的としたものではありません。
心疾患・高血圧・糖尿病などの既往がある方、妊娠中の方、体調に不安のある方は、入浴方法について事前にかかりつけ医にご相談ください。
また、強い疲労感が長期間続く場合、睡眠をとっても回復しない状態が続く場合は、背景に疾患が隠れている可能性があります。無理をせず、医療機関の受診をご検討ください。
